アミロイドーシス(アミロイドニューロパチー)✓ 監修済み
発症様式: 病型により幅がある。ATTRv は 20〜40 歳台発症(集積地の早発型 Val30Met)から 60 歳以降発症(非集積地・晩発型)まで。いずれも緩徐進行性の下肢遠位優位のしびれ・温痛覚低下で始まり、立ちくらみ・下痢便秘・体重減少などの自律神経症状を伴って上行・進行する。ATTRwt は高齢男性の心不全・手根管症候群が前景。AL は数ヶ月〜1 年で全身性に進行し、ネフローゼ・心不全・ニューロパチーを呈する。無治療の ATTRv-FAP は発症から 10 年前後で死亡しうるが、疾患修飾薬で経過が変わる。
概要
さまざまな前駆蛋白から生じた不溶性アミロイド線維が末梢神経・自律神経・心・腎・消化管などに沈着し、機能障害をきたす疾患群。脳神経内科では、長さ依存性の感覚運動性多発ニューロパチーに高度な自律神経障害を伴う「アミロイドニューロパチー」が問題になる。主な病型はトランスサイレチン(transthyretin: TTR)型 ── 遺伝性 ATTRv(旧・家族性アミロイドポリニューロパチー〈FAP〉)と野生型 ATTRwt ── と、免疫グロブリン軽鎖による AL 型。ほかに、慢性炎症(関節リウマチ・慢性感染・自己炎症性疾患など)に続発して血清アミロイド A が沈着する AA 型(反応性)もあるが、末梢神経障害はまれで腎障害(蛋白尿・ネフローゼ)・消化管が主体。ATTRv は本邦では熊本・長野などの集積地に加え、近年は非集積地・高齢発症の孤発例も増えている。診断は生検でのアミロイド証明(コンゴ赤染色・偏光顕微鏡)+前駆蛋白の型判定が要。ATTRv には TTR 四量体安定化薬(タファミジス)や核酸医薬(パチシラン・ブトリシラン・イノテルセン)が登場し、早期診断・治療で予後が大きく変わる時代になった。AL は血液悪性腫瘍に準じた治療を要し、見逃すと予後不良。指定難病 28(全身性アミロイドーシス)。
代表症候
サブタイプ
脳神経内科で最重要。疾患修飾薬の適応
- -常染色体顕性遺伝の TTR 遺伝子変異(本邦最多は Val30Met=p.V50M)
- -感覚運動性ニューロパチー+高度な自律神経障害、心・腎・眼(硝子体混濁)
- -集積地(熊本・長野)の早発型と、非集積地・高齢の晩発/孤発型
高齢男性の心アミロイドーシス。神経は手根管症候群
- -高齢男性に多く、心不全(HFpEF)・不整脈が主体
- -両側手根管症候群・腰部脊柱管狭窄・上腕二頭筋腱断裂の既往が手がかり
- -遺伝子変異はない(加齢に伴う野生型 TTR の沈着)
見逃すと予後不良。血液内科と連携
- -形質細胞異常(MGUS・多発性骨髄腫)による軽鎖沈着。全身性
- -末梢/自律神経障害(15〜20%)、心・腎(ネフローゼ)・肝腫大・巨舌・眼窩周囲紫斑
- -M 蛋白(血清・尿免疫固定、遊離軽鎖 κ/λ 比)を検索
Clinical Pearls
- 💡「進行性の長さ依存性ニューロパチー+高度な自律神経障害+体重減少」を見たらアミロイドを疑う — 温痛覚優位・心症状・両側手根管も手がかり
- 💡IVIg が効かない「CIDP」では ATTRv を疑う — 生検・TTR 遺伝子を検討し、誤診で治療機会を逃さない
- 💡家族歴がなくても ATTRv はある — 非集積地・高齢・孤発例が増えている
- 💡アミロイドを証明したら必ず型判定 — ATTR か AL かで治療が正反対。AL は緊急で血液内科へ
- 💡ATTRv は治療できる時代 — タファミジス(安定化薬)と核酸医薬(パチシラン・ブトリシラン・イノテルセン)。早期診断が予後を変える
症候学
下肢遠位から始まる温痛覚低下・異常感覚・自発痛。初期は温痛覚(small fiber)優位で触覚・深部感覚が保たれる解離性感覚障害を示すことがある。進行すると運動障害・上肢へ上行する
起立性低血圧(立ちくらみ・失神)、消化管(下痢と便秘の交代・悪心嘔吐・体重減少)、排尿障害、勃起障害、発汗低下、瞳孔異常
両側性の手根管症候群がニューロパチー・心症状に数年先行することがある
心(心肥大・HFpEF・伝導障害・不整脈)、腎(蛋白尿・ネフローゼ)、消化管、眼(ATTRv の硝子体混濁・緑内障)、AL では巨舌・眼窩周囲紫斑
ピットフォール
- ⚠CIDP と誤診し IVIg を続ける — ATTRv は左右対称性・進行性ニューロパチーで CIDP に似て、まれに脱髄様の伝導所見も示す。IVIg 不応・高度な自律神経障害・体重減少・心症状・家族歴があれば ATTRv を疑い、生検・TTR 遺伝子を検討する
- ⚠AL を見逃す — AL は数ヶ月で心・腎不全に至り予後不良。M 蛋白(免疫固定・遊離軽鎖比)を検索し、疑えば速やかに血液内科へ
- ⚠孤発・晩発の ATTRv を除外してしまう — 家族歴がなくても ATTRv はある(非集積地・高齢発症・孤発例が増加)。家族歴がないことを除外根拠にしない
- ⚠骨シンチだけで ATTR と決める — 骨シンチは AL でも心集積しうる。必ず AL を除外(FLC・免疫固定)してから非生検 ATTR 診断とする
- ⚠型判定を省く — アミロイドを証明しても型を確定しなければ治療を誤る。免疫染色・質量分析で前駆蛋白を必ず同定する
- ⚠M 蛋白があっても AL と即断しない — 高齢者は MGUS の合併が多く、「M 蛋白陽性でも実はアミロイドは ATTR」が起こる。血清 FLC/免疫固定の結果と組織の型判定を必ず突き合わせる
出典: 難病情報センター「全身性アミロイドーシス(指定難病 28)」. / 日本循環器学会「2020 年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン」(JCS 2020). / Adams D et al. Patisiran, an RNAi therapeutic, for hereditary transthyretin amyloidosis (APOLLO). N Engl J Med 2018;379:11-21. / Benson MD et al. Inotersen treatment for patients with hereditary transthyretin amyloidosis (NEURO-TTR). N Engl J Med 2018;379:22-31. / Adams D et al. Vutrisiran (HELIOS-A). / 各薬剤(ビンダケル®・ビンマック®・オンパットロ®・アムヴトラ®・テグセディ®)添付文書.