脳血管障害

中枢性脳卒中後疼痛(CPSP / 視床痛)✓ 監修済み

発症様式: 脳卒中発症後 数日〜数か月(中央値1か月程度)。亜急性〜慢性経過。退院後・リハ転院後に出現することが多いため、外来フォローでの能動的な問診が重要。

概要

中枢性脳卒中後疼痛(central post-stroke pain: CPSP)は、脳卒中後に病変対側に出現する慢性神経障害性疼痛。脊髄視床路系(特に視床VPL/VPM核、延髄外側、島皮質・二次体性感覚野、橋など)の病変で生じる。Dejerine-Roussy症候群(視床症候群)はその代表型。発症から数週〜数か月遅れて出現することが多く、退院後・リハ転院後に出現するため脳卒中との関連が見落とされやすい。脳卒中全体の1-12%で発症する。一般鎮痛薬・NSAIDsへの反応に乏しく、神経障害性疼痛薬(プレガバリン・三環系抗うつ薬・SNRI)が第一選択。

代表症候

脳卒中病変の対側半身に出現する慢性神経障害性疼痛灼熱痛・刺すような痛み・締め付け感・アロディニア発症から数週〜数か月遅れて出現することが多い(中央値1か月程度)感覚障害(特に温痛覚低下)を伴う一般鎮痛薬・NSAIDsへの反応に乏しい視床VPL/VPM核病変が古典的だが、延髄外側・島皮質・橋など脊髄視床路のどこでも起こりうる脳卒中全体の1-12%で発症(Wallenberg症候群では特に高頻度)

Clinical Pearls

  • 💡脳卒中後の慢性疼痛で対側半身に出現するなら CPSP を最優先で疑う
  • 💡遅発性出現(数週〜数か月)に注意 — 退院後の外来フォローで能動的問診
  • 💡一般鎮痛薬は無効 — 神経障害性疼痛薬(プレガバリン・アミトリプチリン・デュロキセチン)が第一選択
  • 💡Wallenberg症候群後は特に高頻度 — 退院時にCPSPの可能性を本人・家族に説明
  • 💡抑うつとの双方向性 — 疼痛と気分の両方に介入

古典的概念との対応

  • 📖1906年Dejerine & Roussyが視床病変後の対側半身痛として「視床症候群」を報告
  • 📖後にAndersen等が脳卒中全般での頻度を1〜12%と報告し「中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)」の概念が確立

症候学

対側半身の自発痛

灼熱痛(burning)、電撃痛(shooting)、締め付け感(squeezing)、ジンジンする感じなど多彩。持続性または間欠的。

臨床的意義: 病変対側に出現することが診断の鍵。局在は脊髄視床路の病変分布に一致(視床全体・半身、Wallenbergでは同側顔面+対側体幹四肢など)
アロディニア・痛覚過敏

軽い触覚(衣服・布団・風)、温度変化(冷たい水・暖房)で誘発される痛み。

臨床的意義: 神経障害性疼痛の特徴的所見。軽い触覚で誘発される痛みは「dynamic mechanical allodynia」、温度刺激で誘発されるものは「thermal allodynia」
感覚障害

温痛覚低下が前景。触覚・深部感覚は比較的保たれることが多い(解離性感覚障害)。

臨床的意義: 脊髄視床路選択的障害を反映。視床病変では全感覚低下のことも
気分への影響

慢性疼痛による抑うつ・不眠・QOL低下。

臨床的意義: 抑うつとの双方向性 — 痛みが抑うつを誘発し、抑うつが痛みを増強する。SSRI/SNRIは抑うつ・疼痛両方に作用

機能解剖との対応

視床(VPL/VPM核)

体性感覚の中継核

対側半身の感覚障害視床痛(Dejerine-Roussy症候群)
延髄外側(Wallenberg症候群)

脊髄視床路の通過部位

同側顔面・対側体幹四肢の温痛覚障害CPSP
島皮質・二次体性感覚野

痛みの情動的処理

痛みの不快感
橋外側

脊髄視床路の通過部位

対側半身の温痛覚障害CPSP

ピットフォール

  • 発症が遅延性のため、リハ転院後・退院後に出現することが多く、脳卒中既往との関連が見落とされやすい
  • 「視床病変=視床痛」ではない — 延髄外側・島皮質・橋など脊髄視床路の任意の部位で起こりうる
  • NSAIDs・アセトアミノフェンへの反応は乏しい — 神経障害性疼痛薬を選択
  • 過剰診断より過小診断のリスクが高い(脳卒中後の身体表現性疼痛として扱われがち)
  • 抑うつとの双方向性を意識 — 疼痛・抑うつ両方への介入が有効
  • Wallenberg症候群後はCPSPの発症率が特に高い — 退院後の能動的フォローを
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出典: Klit H, Finnerup NB, Jensen TS. Central post-stroke pain: clinical characteristics, pathophysiology, and management. Lancet Neurol. 2009;8(9):857-868. / Finnerup NB, et al. Pharmacotherapy for neuropathic pain in adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol. 2015;14(2):162-173. / Vestergaard K, et al. Lamotrigine for central poststroke pain. Neurology. 2001;56(2):184-190.