脳血管障害
小脳梗塞✓ 監修済み
発症様式: 急性(突然発症)
概要
小脳を灌流する動脈(後下小脳動脈:PICA、前下小脳動脈:AICA、上小脳動脈:SCA)の閉塞により小脳実質が虚血・壊死に陥る疾患。急性のめまい・嘔吐・歩行障害で発症し、末梢前庭障害(前庭神経炎)と類似した症状を呈するため、鑑別が臨床上極めて重要である。大梗塞では脳幹圧迫・閉塞性水頭症から意識障害・呼吸障害をきたし致死的になりうる。
代表症候
突然発症のめまい・嘔吐・歩行障害体幹失調が著明(四肢失調は支配領域による)Head impulse test正常(末梢前庭障害では異常になる)注視方向性眼振や垂直性眼振大梗塞では脳幹圧迫により急速に意識障害が進行しうるPICA領域では四肢失調が軽度で、めまいだけが目立つことがある
Clinical Pearls
- 💡PICA梗塞は「偽末梢パターン」を呈するため最も見逃しやすい — HIT正常が最大のRed Flag
- 💡HINTS検査の中枢性めまい検出感度は急性期のMRIを上回るとする報告がある
- 💡小脳梗塞は浮腫で24-72時間後に急速に悪化しうる — 入院経過観察が必要
- 💡歩行不能は入院の強い適応となる
症候学
めまい・嘔吐
突然の回転性めまいと強い嘔吐で発症する。前庭神経炎と酷似するため注意が必要。
臨床的意義: めまいだけでは末梢性と中枢性の区別ができない。HINTSなどの身体所見で鑑別する。
体幹失調・歩行障害
立位・歩行が著しく不安定になり、独歩不能となることが多い。体幹が患側に偏倚する。
臨床的意義: 歩行不能+体幹失調は中枢性を強く疑うサイン。末梢前庭障害でも歩行不安定は出るが、体幹失調は通常みられない。
四肢失調
SCA領域では指鼻試験・踵膝試験の異常が出やすい。PICA領域では四肢失調は軽度か欠如することがある。
臨床的意義: PICA梗塞では「めまいだけ」の偽末梢性パターンを呈しうる — 最も見逃しやすいタイプ。
構音障害
小脳性の構音障害(断続性・爆発性発語)を認めることがある。
臨床的意義: 前庭神経炎では構音障害は生じない — 存在すれば中枢性の強い根拠。
ピットフォール
- ⚠PICA領域梗塞では四肢失調がなく「めまいだけ」のことがある — 偽末梢パターン
- ⚠HIT正常+急性めまいは中枢性を疑う最も重要なサイン
- ⚠発症48時間以内のMRI(DWI)は小さな小脳梗塞で偽陰性になりうる
- ⚠小脳梗塞は浮腫による脳幹圧迫で急速に悪化しうる — 経過観察が重要
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出典: Kattah JC, et al. HINTS to diagnose stroke in the acute vestibular syndrome. Stroke. 2009;40(11):3504-3510. / Edlow JA, et al. Diagnosis of acute neurological emergencies in pregnant women. Lancet Neurol. 2013;12(2):175-185. / Lee H. Neuro-otological aspects of cerebellar stroke syndrome. J Clin Neurol. 2009;5(2):65-73.