脳血管障害

慢性硬膜下血腫(CSDH)✓ 監修済み

発症様式: 亜急性〜慢性(軽微頭部外傷から3週〜3ヶ月)。外傷歴が不明確なことも多い(特に認知症患者・アルコール多飲者)。抗血栓薬服用が誘発要因となる。

概要

硬膜下腔に貯留した液体性血腫(chronic subdural hematoma: CSDH)が脳を圧迫し、神経症状を呈する病態。軽微な頭部外傷の3週〜3ヶ月後に発症することが多く、高齢者・抗血栓薬服用者・アルコール多飲者・脳萎縮例が高リスク。認知機能低下・歩行障害・片麻痺など多彩な症候を呈し、認知症や脳卒中と誤診されやすい。手術(穿頭血腫洗浄術)で著明な改善が期待できる「治療可能な認知症」「治療可能な片麻痺」の代表であり、見逃しは致命的。

代表症候

高齢者の認知機能低下・歩行障害・片麻痺の重要鑑別軽微な頭部外傷の3週〜3ヶ月後に発症(外傷歴が不明なことも多い)高リスク:高齢者、抗血栓薬服用、アルコール多飲、脳萎縮、低髄液圧症状は多彩・変動性(脳卒中・認知症・うつ病と誤診されやすい)頭部CTで容易に診断可能穿頭血腫洗浄術(burr-hole drainage)で著明改善近年は中硬膜動脈(MMA)塞栓術が再発予防の補助治療として注目

Clinical Pearls

  • 💡高齢者の「治療可能な認知症」「治療可能な片麻痺」の代表
  • 💡外傷歴は不明確なことが多い — 家族から能動的に聴取
  • 💡等吸収期CTは見逃しやすい — 疑えばMRI
  • 💡両側性CSDHはmidline shiftがなく検出困難
  • 💡抗血栓薬服用高齢者の新規認知低下では必ず鑑別
  • 💡手術で別人のように改善する症例がある — 「もう年だから」と片付けない

症候学

認知機能低下

亜急性に進行する集中力低下・注意障害・記憶障害・無気力。アルツハイマー型認知症と誤診されやすい。

臨床的意義: 「治療可能な認知症」として鑑別の最上位に。高齢者で「最近物忘れが急に進んだ」「ぼんやりしている」は CSDH を必ず疑う。
歩行障害

ふらつき・歩行緩慢・転倒。両側性の場合もある。

臨床的意義: 前頭葉圧迫を反映。NPH や VaD と誤診される
片麻痺

対側の軽度〜中等度片麻痺。脳卒中と誤診されやすい。

臨床的意義: 緩徐〜亜急性発症が脳卒中と異なる。経時的に進行することが特徴
頭痛

軽度〜中等度の持続性頭痛。頭蓋内圧亢進を反映

臨床的意義: 頭痛は約半数で認める。新規発症の頭痛+外傷既往(軽微でも)はCSDHを疑う
意識障害

進行例では意識障害・嗜眠状態。大きな血腫で脳ヘルニアに至ることも

臨床的意義: 緊急手術の適応。瞳孔不同・対光反射異常があれば直ちに脳神経外科
てんかん発作

焦点起始発作、または焦点起始両側強直間代発作(FBTC)として出現することがある。

臨床的意義: 皮質刺激を反映。CSDH は新規発症てんかんの原因として高齢者で重要

ピットフォール

  • 高齢者の「認知症が急に進んだ」「歩行が急に悪くなった」は必ずCSDHを疑う
  • 軽微外傷歴は本人が覚えていないことが多い — 家族から聴取・転倒の有無を確認
  • 等吸収期(発症1-3週)の単純CTで見逃される — MRIで補完
  • 両側性CSDHはmidline shiftがなく見逃されやすい
  • 抗血栓薬・抗凝固薬服用者は CSDH の高リスク群 — 高齢者の認知低下時に薬剤を見直す
  • てんかん発作で初発することもある — 高齢者の新規発症てんかんではCSDHを鑑別
  • 「もう年だから」と片付けず、画像評価で確認 — 手術で別人のように改善することがある
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出典: Liu W, et al. Endovascular Embolization of the Middle Meningeal Artery for the Treatment of Chronic Subdural Hematoma (EMBOLISE). N Engl J Med. 2024;390(15):1389-1400. / Hutchinson PJ, et al. Trial of Dexamethasone for Chronic Subdural Hematoma (DEX-CSDH). N Engl J Med. 2020;383(27):2616-2627.