脳静脈洞血栓症(CVST)✓ 監修済み
発症様式: 亜急性が最多(数日〜数週間で進行)。急性発症(24時間以内)も約30%、慢性発症(1ヶ月以上)も約10%。誘因として妊娠・産褥期、経口避妊薬、感染(中耳炎・副鼻腔炎・髄膜炎)、脱水、血栓性素因、悪性腫瘍、自己免疫疾患、外傷などが挙げられる。
概要
脳静脈・静脈洞(上矢状静脈洞、横静脈洞、S状静脈洞、海綿静脈洞、深部静脈系など)に血栓が形成され、静脈うっ滞・頭蓋内圧亢進・出血性梗塞をきたす病態。動脈性脳卒中と異なり「亜急性に進行する頭痛+多彩な神経症候」が特徴で、若年女性(妊娠・産褥・経口避妊薬)や血栓性素因のある患者で多い。MRVまたはCTVが診断の鍵で、未治療では予後不良だが早期抗凝固療法で大部分が改善する。
代表症候
Clinical Pearls
- 💡若年女性の「新しいタイプの頭痛」「妊娠/産褥期の頭痛」「経口避妊薬服用中の頭痛」では必ずCVSTを鑑別に
- 💡頭部単純CTのみで「異常なし」と判断しない — MRV/CTVが必須
- 💡出血性梗塞があっても抗凝固療法は禁忌ではない(むしろ第一選択)
- 💡深部静脈系の血栓は両側視床浮腫で急速進行 — 早期診断と治療が鍵
- 💡D-dimer陰性でもCVSTを否定できない
- 💡予後は早期治療開始で良好(70-80%が機能回復)
症候学
持続性で増悪する。動作・咳嗽・体位変換で悪化(頭蓋内圧亢進性)。突発発症のこともある(thunderclap headache様)。
頭蓋内圧亢進の三徴。複視は外転神経麻痺(VI神経)によることが多い。
焦点起始発作、または焦点起始両側強直間代発作(FBTC)として出現。約 40% で合併(動脈性脳卒中の約 10% より高頻度)。
麻痺・失語・感覚障害など。静脈支配領域に対応し、動脈支配パターンと一致しないのが特徴。
進行例・深部静脈系・両側病変で出現。
ピットフォール
- ⚠「片頭痛の発作」「緊張型頭痛」と誤診されやすい — 新しいタイプの持続性頭痛・増悪する頭痛では必ず疑う
- ⚠頭部単純CTでは多くの場合所見がない(高吸収域として血栓が見えるのは一部) — MRV/CTVで確定
- ⚠D-dimer陰性でもCVSTを否定できない(特に亜急性・慢性例)
- ⚠出血性病変があっても抗凝固療法は禁忌ではない — CVSTの第一選択治療
- ⚠若年女性の「新規発症頭痛」「妊娠/産褥期の頭痛」では必ず鑑別に
- ⚠深部静脈系(内大脳静脈・Galen静脈)の血栓は両側視床浮腫で急速に進行 — 早期診断と治療が予後を決める
- ⚠海綿静脈洞血栓症は感染性のことが多い(顔面・副鼻腔感染) — 抗菌薬と抗凝固の併用が必要
出典: Ferro JM, et al. Prognosis of cerebral vein and dural sinus thrombosis: results of the International Study on Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis (ISCVT). Stroke. 2004;35(3):664-670. / Ferro JM, et al. European Stroke Organization guideline for the diagnosis and treatment of cerebral venous thrombosis. Eur J Neurol. 2017;24(10):1203-1213. / Ferro JM, et al. Safety and Efficacy of Dabigatran Etexilate vs Dose-Adjusted Warfarin in Patients With Cerebral Venous Thrombosis (RE-SPECT CVT). JAMA Neurol. 2019;76(12):1457-1465.