運動異常症

ジストニア✓ 監修済み

発症様式: 発症年齢は病型で大きく異なり、若年(小児〜青年)発症は全身へ広がりやすく遺伝性が多い、成人発症は焦点性にとどまりやすい。DRD は小児期に下肢のジストニア・歩行障害で発症し日内変動(夕方悪化)を示す。薬剤性は抗精神病薬・制吐薬の曝露後(急性ジストニア反応は投与後まもなく、遅発性は長期使用後)。若年・全身性・進行性では遺伝性・二次性(Wilson 病等)を積極的に疑う。

概要

持続的または間欠的な筋収縮により、異常な(しばしば反復性の)運動や姿勢をきたす運動異常症(dystonia)。ねじれるような・振戦様の要素を伴い、随意運動で誘発・増悪し、罹患部位を軽く触れると軽快する感覚トリック(geste antagoniste)が特徴的。Albanese らの 2013 年コンセンサスにより、臨床像(Axis I)と病因(Axis II)の 2 軸で分類される。焦点性(痙性斜頸・眼瞼痙攣など)が最も多く、若年発症の全身性・遺伝性もある。診療の要は、① 治療可能なドパ反応性ジストニア(DRD/瀬川病)を L-ドパ試験で見逃さないこと、② Wilson 病・薬剤性・構造性など二次性の原因を除外すること、③ 焦点性にはボツリヌス毒素療法を第一選択とすること。

代表症候

ねじれ・反復性の異常運動と異常姿勢(持続的〜間欠的な筋収縮)感覚トリック(geste antagoniste):触れると軽快する随意運動で誘発・増悪、課題特異性(書痙など特定動作でのみ出る)焦点性(痙性斜頸・眼瞼痙攣)が最多、若年発症の全身性・遺伝性もあるドパ反応性ジストニア(DRD)・Wilson 病・薬剤性を見逃さない

サブタイプ

焦点性ジストニア(focal)

成人発症で最多。1 つの身体部位に限局。第一選択はボツリヌス毒素療法

  • -痙性斜頸(頸部ジストニア):最も多い焦点性。torticollis/laterocollis/retrocollis/antecollis。感覚トリックが目立つ
  • -眼瞼痙攣(blepharospasm)、口下顎ジストニア、痙攣性発声障害(喉頭ジストニア)
  • -書痙・音楽家のジストニアなど課題特異性ジストニア
分節性・多巣性・片側性・全身性(分布)

Albanese 2013 Axis I の分布による分類

  • -分節性:隣接する 2 部位以上(例:Meige 症候群=眼瞼痙攣+口下顎ジストニア)
  • -全身性:体幹+2 部位以上。若年発症・遺伝性が多い(DYT1 など)
  • -片側性(hemidystonia):一側性で、対側基底核の構造性病変を示唆
ドパ反応性ジストニア(DRD/瀬川病)

見逃してはいけない治療可能病型。若年発症ジストニアで必ず想起

  • -GTP シクロヒドロラーゼ(GCH1)遺伝子変異等。小児期に下肢のジストニア・歩行障害で発症
  • -日内変動(朝軽く夕方に悪化)が特徴
  • -少量の L-ドパで劇的かつ持続的に改善し、長期使用でも運動合併症を生じにくい
複合型・二次性(combined/acquired)

ジストニアに他の運動異常や病因が加わる。Axis II の病因分類

  • -複合型:ミオクローヌス・ジストニア(SGCE)、急速発症ジストニア・パーキンソニズム
  • -二次性:Wilson 病、薬剤性(遅発性・急性ジストニア反応)、構造性(基底核病変)、代謝性
  • -パーキンソン病・PSP・CBD など変性疾患に伴うジストニア

Clinical Pearls

  • 💡若年発症のジストニアには必ず L-ドパを試す — ドパ反応性ジストニア(DRD)を見逃さないため。少量で劇的に改善する
  • 💡若年ジストニアでは Wilson 病を除外する — セルロプラスミン・尿中銅・KF 輪。治療可能疾患
  • 💡感覚トリック(触れると軽快)はジストニアの決め手 — 痙性斜頸で顎に手を添えると首が改善する。心因性と誤診しない
  • 💡焦点性ジストニアの第一選択はボツリヌス毒素療法 — 痙性斜頸・眼瞼痙攣に保険適用
  • 💡片側性ジストニアは対側基底核の構造性病変を疑い MRI を撮る

症候学

異常姿勢・異常運動

持続的〜間欠的な筋収縮による、ねじれるような・反復性の運動と異常姿勢。同一パターンで反復する(patterned)のが特徴。振戦様の要素(ジストニア性振戦)を伴うことがある

臨床的意義: 主動筋・拮抗筋の同時収縮による。パターン化・方向性が舞踏運動やミオクローヌスとの違い
感覚トリック(geste antagoniste)

罹患部位や近傍を軽く触れると症状が軽快する現象。痙性斜頸で顎や頬に手を添えると首の向きが改善するのが典型

臨床的意義: ジストニアに特徴的で診断的価値が高い。心因性と誤診されやすいが、これはジストニアの特徴
動作特異性・課題特異性

特定の動作でのみ出現する(書字でのみ出る書痙、特定の楽器演奏でのみ出る音楽家ジストニア)。動作で誘発・増悪

臨床的意義: 課題特異性はジストニアの特徴。特定動作でのみ出ることを「心因」と決めつけない
日内変動(DRD)

朝は軽く夕方に悪化する変動。ドパ反応性ジストニアで特徴的

臨床的意義: 若年発症+日内変動は DRD を強く示唆。L-ドパ試験の適応

ピットフォール

  • ドパ反応性ジストニア(DRD)を見逃さない — 若年発症・下肢・日内変動では L-ドパ試験を。少量で劇的に改善する治療可能病型
  • Wilson 病を除外する — 若年発症のジストニアではセルロプラスミン・尿中銅・KF 輪を確認。治療可能
  • 薬剤性を見逃さない — 抗精神病薬・制吐薬による遅発性ジストニア、急性ジストニア反応。薬剤歴を確認
  • 心因性と決めつけない — 感覚トリック・課題特異性・動作特異性はジストニアの特徴であり心因の証拠ではない
  • 片側性ジストニアは構造性を疑う — 対側基底核の病変を MRI で検索する
1 / 6症候学 →

出典: Albanese A et al. Phenomenology and classification of dystonia: a consensus update. Mov Disord 2013;28:863-873. / 日本神経学会監修『ジストニア診療ガイドライン 2018』(南江堂).