びまん性筋膜炎(好酸球性筋膜炎/Shulman症候群)✓ 監修済み
発症様式: 激しい運動・外傷・高熱の後に、四肢(前腕・下腿)の有痛性の腫脹・硬化として急性〜亜急性に発症することが多い。数週で対称性の板状硬化が進み、関節可動域が制限される。放置すると関節拘縮を残す。明らかな誘因がない例もある。30〜60 歳代に多く、やや男性に多い。
概要
びまん性筋膜炎(好酸球性筋膜炎、Shulman 症候群)は、四肢の対称性・びまん性の板状硬化(筋膜の炎症と線維化)をきたす、強皮症に似た硬化性疾患。激しい運動・外傷・高熱の後に、四肢の有痛性の腫脹・硬化として急性〜亜急性に発症することが多い。全身性強皮症と異なり、手指末端・顔面・体幹の硬化やレイノー現象・内臓病変を欠き、抗核抗体・リウマチ因子は通常陰性。高γグロブリン血症・赤沈亢進・血清アルドラーゼ上昇を伴い、末梢血好酸球増多を伴うことが多いが必ずしも増加せず、診断に必須ではない。診断は皮膚から筋膜に及ぶ全層生検(筋膜の肥厚・線維化+好酸球/単核球浸潤)と MRI(筋膜の肥厚)による。副腎皮質ステロイドがよく効くが、関節拘縮を残さないよう早期治療が重要。白血病・悪性リンパ腫・骨髄異形成症候群などの血液疾患や悪性腫瘍の合併があり、スクリーニングを要する。脳神経内科では筋炎・強皮症の鑑別として重要。指定難病ではない(研究班レベルの希少疾患)。
代表症候
サブタイプ
まずこの像を基準にする
- -誘因(激しい運動・外傷)後の四肢対称性の板状硬化
- -groove sign・peau d’orange、末梢血好酸球増多・高γグロブリン血症
- -ステロイド反応性が良好
好酸球がなくても否定しない
- -組織の好酸球浸潤を欠くことが約 1/3 ある。末梢血好酸球増多も必ずしも伴わない
- -臨床像・筋膜生検・MRI で診断する
- -「好酸球がないから違う」としない
必ずスクリーニングする
- -白血病・悪性リンパ腫・骨髄異形成症候群(MDS)・固形癌(乳癌など)の合併
- -治療抵抗性・非典型例では特に検索
- -血算・末梢血像、必要に応じ骨髄検査・画像
Clinical Pearls
- 💡「運動後に四肢が対称性に板のように硬くなった」を見たら好酸球性筋膜炎を疑う — 末梢血好酸球増多は手がかりだが、なくても否定しない
- 💡groove sign(挙上で静脈に沿う溝)は好酸球性筋膜炎らしい所見 — 全身性強皮症では見ない
- 💡CK が正常でもアルドラーゼが上がることがある — 筋炎らしくない「硬化」では好酸球性筋膜炎を考える
- 💡生検は筋膜まで採る — 表層の皮膚だけでは診断できない
- 💡好酸球性筋膜炎を見たら血液疾患・悪性腫瘍を検索 — 特に治療抵抗性・非典型例で
症候学
前腕・下腿を中心に、有痛性の腫脹から皮下の硬い硬結へ進む。皮膚をつまみ上げにくい。手指末端・顔面・体幹は侵されにくい
患肢を挙上すると皮静脈に沿って溝状の陥凹(groove sign/溝徴候)が現れる。皮膚は橙皮状(peau d’orange)を呈する
硬化により関節可動域が制限され、放置すると拘縮に至る。手の硬化で手根管症候群を合併することがある
レイノー現象・爪郭毛細血管異常・食道運動障害などの内臓病変を欠く。抗核抗体・リウマチ因子は通常陰性
ピットフォール
- ⚠全身性強皮症と誤る — 好酸球性筋膜炎はレイノー・内臓病変・末端/顔面硬化を欠き、抗核抗体・RF が通常陰性。手指末端の硬化や内臓病変があれば強皮症を考える
- ⚠表層の皮膚生検で診断しようとする — 病変の主座は筋膜。皮膚から筋膜・筋に及ぶ全層生検でないと診断できない
- ⚠好酸球がないと否定する — 末梢血好酸球増多は必ずしも伴わず(診断に必須でなく、ステロイドで正常化もする)、組織の好酸球浸潤も約 1/3 で欠く。臨床・筋膜生検・MRI で診断する
- ⚠血液疾患・悪性腫瘍の合併を見逃す — 白血病・悪性リンパ腫・MDS・固形癌を合併しうる。血算・末梢血像を確認し、治療抵抗性・非典型例では骨髄/画像検索を
- ⚠治療が遅れて拘縮を残す — 早期のステロイドと可動域訓練で拘縮を防ぐ
出典: 厚生労働科学研究「強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成事業」好酸球性筋膜炎 診断基準・重症度分類(山本俊幸ほか). / 難病情報センター「好酸球筋膜炎」(研究奨励分野). / Shulman LE. Diffuse fasciitis with eosinophilia. / Fujimoto M et al. Serum aldolase level is a useful indicator of disease activity in eosinophilic fasciitis. J Rheumatol 1995;22:563-565. / Lebeaux D, Sène D. Eosinophilic fasciitis (Shulman disease). Best Pract Res Clin Rheumatol 2012;26:449-458.