ハンチントン病(Huntington病)✓ 監修済み
発症様式: 潜行性。30〜50 代の発症が多く、緩徐に進行する。若年発症型(20 歳未満、Westphal 型)は CAG リピートが長く父由来が多い。発症は運動症状より数年先に精神・認知症状で始まることもある。
概要
HTT 遺伝子(第 4 番染色体)の CAG リピート異常伸長による常染色体顕性遺伝の神経変性疾患。舞踏運動を中心とする不随意運動、精神症状、認知機能低下(皮質下性認知症)を三徴とし、線条体(尾状核)の変性を来す。30〜50 代の発症が多く緩徐進行性。CAG リピートが長いほど発症が早く、父由来では次世代でさらに伸長して若年発症(表現促進 anticipation)。根本治療はなく、対症療法と多職種ケア、遺伝カウンセリングが柱。指定難病(8)。
代表症候
サブタイプ
最も多い。30〜50 代に舞踏運動で発症し、緩徐に進行
中年発症
- -舞踏運動が前景
- -精神症状・皮質下性認知症を伴う
- -経過とともにジストニア・固縮・寡動も加わる
20 歳未満発症。舞踏運動より固縮・無動・ジストニアが前景でパーキンソン病様
小児・若年(父からの遺伝が多い)
- -固縮・無動・ジストニア主体
- -てんかん発作・小脳症状・認知低下が進行性
- -CAG リピートが長く父由来が多い(表現促進)
Clinical Pearls
- 💡「舞踏運動+精神症状+皮質下性認知症+顕性遺伝の家族歴」でハンチントン病を疑い、CAG リピートで確定
- 💡サッケードの開始遅延・緩徐化は早期から出る手がかり
- 💡若年発症(Westphal 型)は固縮主体でパーキンソン病様 ── 家族歴と遺伝子検査で診断
- 💡自殺リスクが高い ── 精神症状を必ず評価し、舞踏運動治療薬(テトラベナジン)でうつを悪化させない
- 💡遺伝子検査は検査前後の遺伝カウンセリングとセット。at-risk 者・未成年の予測的検査は慎重に
症候学
突発的で流れるような不随意運動。顔面・四肢・体幹に不規則に出現し、初期は落ち着きのなさに見える。進行するとジストニア・固縮・寡動が加わる。
一定の随意運動を維持できない。舌の突出を保てない、握力を一定に保てない(milkmaid grip、乳搾り様握り)。
衝動性眼球運動(サッケード)の開始遅延・緩徐化、追従の障害。
抑うつ、易刺激性、無為・アパシー、強迫、不安、精神病症状(幻覚・妄想)。自殺のリスクが高い。
実行機能・注意・処理速度・精神運動速度の低下が前景。記憶は比較的保たれる(想起の障害が主)。
ピットフォール
- ⚠舞踏運動を「落ち着きのなさ」や不安と誤り、随意運動に紛れて見逃す
- ⚠若年型(Westphal 型)は固縮・無動が主体でパーキンソン病様 ── 舞踏運動がなくても否定しない
- ⚠精神症状(抑うつ・自殺念慮)が運動症状に先行しうる ── 自殺リスクを必ず評価
- ⚠舞踏病の二次性・他の原因(薬剤性・SLE/APS・甲状腺・Wilson 病・神経有棘赤血球症等)を除外せずに確定しない
- ⚠無症状の血縁者・未成年への予測的遺伝子検査を、遺伝カウンセリングなしに安易に行わない
出典: 難病情報センター「ハンチントン病(指定難病 8)」. / GeneReviews(Huntington Disease). / Bates GP, et al. Huntington disease. Nat Rev Dis Primers. 2015;1:15005. / テトラベナジン(コレアジン®)添付文書.