中枢神経の自己免疫性疾患
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)✓ 監修済み
発症様式: 急性。視神経炎や脊髄炎として急性に発症し、MSより重症のことが多い。再発は不定期で、寛解期には無症状。
概要
抗アクアポリン4(AQP4)抗体を主な病因とする中枢神経系の自己免疫性炎症性疾患。視神経炎と脊髄炎を主体とし、従来の「視神経脊髄炎(NMO)」を含むより広い概念として定義された。MSとは病態・治療・予後が異なるため、鑑別が臨床的に極めて重要である。再発ごとに後遺障害が蓄積しやすく、再発予防が治療の柱となる。
代表症候
抗AQP4抗体陽性(約80%)重症視神経炎(両側性、視力予後不良)長大脊髄病変(3椎体以上のLETM)area postrema症候群(難治性吃逆・嘔吐)再発ごとに障害が蓄積(MSと異なり回復が不良)中年女性に多い
Clinical Pearls
- 💡「重症視神経炎+長大脊髄病変+抗AQP4抗体陽性」がNMOSDの三徴
- 💡原因不明の難治性吃逆 → area postrema症候群 → NMOSDを疑う
- 💡MSとNMOSDの鑑別は治療選択に直結する — 誤診は有害
- 💡オリゴクローナルバンド陰性はNMOSDを支持する所見(MSでは95%以上で陽性)
症候学
視神経炎
重症の視力低下(光覚弁以下になることもある)。両側性または急速な経過が多い。眼痛を伴う。
臨床的意義: MSの視神経炎より重症で、視力予後が不良。両側同時発症はNMOSDを強く示唆する。
長大横断性脊髄炎
3椎体以上に及ぶ長大な脊髄病変(LETM)。対麻痺・四肢麻痺、感覚レベル、膀胱直腸障害を呈する。
臨床的意義: MSの脊髄病変は通常短い(3椎体未満)。3椎体以上の連続病変はNMOSDの重要な鑑別点。
area postrema症候群
難治性の吃逆(しゃっくり)、嘔気・嘔吐が持続する。延髄最後野の病変による。
臨床的意義: NMOSDに特徴的な症候。消化器疾患と誤診されやすい。原因不明の難治性吃逆ではNMOSDを考慮する。
脳症候
間脳病変(過眠、内分泌異常)、大脳白質病変、脳幹病変を呈することがある。
臨床的意義: AQP4は視床下部・脳室周囲に豊富に発現しており、これらの部位が障害されやすい。
ピットフォール
- ⚠MSと誤診してインターフェロンβやフィンゴリモドを投与するとNMOSDが悪化しうる
- ⚠抗AQP4抗体陰性でもNMOSDは否定できない(約20%が血清陰性)
- ⚠初回エピソードがarea postrema症候群の場合、消化器疾患と誤診されやすい
- ⚠再発ごとに障害が蓄積するため、再発予防が最も重要
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出典: Wingerchuk DM, et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology. 2015;85(2):177-189. / 多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023(日本神経学会・日本神経免疫学会). / Pittock SJ, et al. Neuromyelitis optica spectrum disorder. Lancet. 2023;401(10390):1840-1854.