パーキンソン病✓ 監修済み
発症様式: 50〜65歳に好発。緩徐進行性。片側の上肢から始まり、対側へ進展するのが典型。非運動症状(便秘、嗅覚低下、RBD)は運動症状に数年〜十数年先行しうる。
概要
中脳黒質のドパミン神経細胞の変性・脱落により、安静時振戦・筋強剛・無動/寡動・姿勢反射障害を主徴とする進行性の神経変性疾患。運動症状に加え、便秘・嗅覚低下・REM睡眠行動障害・うつ・認知機能低下などの非運動症状も重要。L-ドパを中心とした薬物療法が治療の柱だが、長期経過でwearing-offやジスキネジアなどの運動合併症が出現し、薬剤調整が複雑化する。
代表症候
Clinical Pearls
- 💡指タップの decrement(反復で振幅漸減)は PD に最も特徴的な所見の一つ — MDS-UPDRS Part 3 の中核
- 💡L-ドパ への良好な反応は PD を支持する — 反応が乏しければ診断を見直す
- 💡非運動症状(便秘・嗅覚低下・RBD)は運動症状に数年〜十数年先行しうる — プロドローマル PD の理解が重要
- 💡薬の急な中断は悪性症候群のリスク — 周術期・絶食時の継続計画(ロチゴチン貼付・経鼻胃管 L-ドパ等)は事前に立てる
- 💡高齢者・認知機能低下例では L-ドパ 主体で。ドパミンアゴニスト・抗コリン薬は副作用リスクが高い
- 💡進行期 wearing-off/ジスキネジアの薬物調整は段階的に:L-ドパ 増量分割 → COMT/MAO-B → アデノシン A2A/ゾニサミド → アゴニスト → デバイス治療
- 💡幻覚への対応は「薬を引く」が原則:抗コリン薬 → アマンタジン → アゴニスト → MAO-B/COMT → L-ドパ の順
症候学
4〜6Hzの安静時振戦。上肢遠位に好発。pill-rolling tremor。精神的緊張で増強、随意運動で一時的に消失。
他動運動時の持続的な抵抗。歯車様強剛(振戦が重畳)と鉛管様強剛がある。
動作の開始遅延、速度低下、振幅減少。仮面様顔貌、小声、小字症。
押されると立て直せない。すくみ足。前傾姿勢。
便秘、嗅覚低下、REM睡眠行動障害、うつ、不安、認知機能低下、起立性低血圧、排尿障害。
ピットフォール
- ⚠早期から著明な姿勢反射障害がある場合は PSP・MSA 等の atypical parkinsonism を考える
- ⚠安静時振戦がないパーキンソン病もある — 無動・筋強剛優位型
- ⚠L-ドパへの反応が乏しい場合は診断を見直す(MSA・PSP・薬剤性等)
- ⚠薬剤性パーキンソニズムの除外 — 抗精神病薬・制吐薬(メトクロプラミド・スルピリド等)
- ⚠本態性振戦との鑑別 — 姿勢時・動作時振戦が主体で、安静時は軽度。DAT スキャン正常
- ⚠若年発症(< 50 歳)では Wilson 病の除外が必須(銅・セルロプラスミン・尿中銅・Kayser-Fleischer 輪)
- ⚠抗パーキンソン病薬の急な中断は悪性症候群類似状態を起こしうる。周術期・絶食時の継続経路を事前に計画
- ⚠衝動制御障害(ICD)はドパミンアゴニスト使用者の 10-20%。本人は自発的に訴えないため、能動的に問診
- ⚠wearing-off とジスキネジアの混同に注意 — 「動きにくい」が off なのか、on 時の不随意運動なのかで対応が逆
出典: 日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン 2018. / Postuma RB, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2015;30(12):1591-1601. / 日本神経治療学会「Parkinson 病の device aided therapy」. / Schuepbach WMM et al. NEJM 2013 (EARLYSTIM). / Soileau MJ et al. Lancet Neurol 2022 (foslevodopa-foscarbidopa, M15-736).