トゥレット症(チック症)✓ 監修済み
発症様式: 小児期(5〜7 歳)に運動チック(まばたき・顔しかめなど)で発症し、音声チックは遅れて出ることが多い。10〜12 歳ごろに最も強くなり、成人までに多くは軽快する。経過中にチックの種類・部位が移り変わる(レパートリーの変化)。ADHD は就学前後、OCD は学童期以降に顕在化することが多い。
概要
複数の運動チックと 1 つ以上の音声チックが 1 年以上持続し、18 歳未満に発症する神経発達症(Tourette syndrome/トゥレット症)。チックは突然・急速・反復性・非律動性の運動(運動チック)や発声(音声チック)で、前駆衝動(premonitory urge:ムズムズした違和感)に続いて生じ、一時的に随意的に抑制できる・暗示や集中で変動する・症状が良くなったり悪くなったり(wax and wane)するのが特徴。ADHD・強迫症(OCD)・不安などの併存が多く、チック本体よりこれらが生活の支障になることが多い。汚言(コプロラリア)は約 10% に留まり診断に必須ではない(よくある誤解)。多くは成人までに軽快する。DSM-5 でトゥレット症・持続性(慢性)運動/音声チック症・暫定的チック症に分類される。
代表症候
サブタイプ
DSM-5 の中核。運動チックと音声チックの両方があり 1 年以上
- -複数の運動チック かつ 1 つ以上の音声チック(同時に存在しなくてよい)
- -最初のチック発症から 1 年以上持続(増悪・軽快を繰り返してよい)
- -18 歳未満の発症
運動チックか音声チックの「どちらか一方」が 1 年以上
- -運動チック または 音声チックのいずれか(両方はない)
- -1 年以上持続、18 歳未満発症
発症からまだ 1 年未満の段階
- -運動および/または音声チック
- -持続が 1 年未満、18 歳未満発症
Clinical Pearls
- 💡前駆衝動・一時的な抑制可能性・wax and wane がチックの決め手 — 不随意運動や機能性との鑑別に使う
- 💡汚言がなくてもトゥレット症 — コプロラリアは約 10%。診断に必須でないという誤解を解く
- 💡「最も困っていること」は併存症のことが多い — ADHD・OCD・不安を必ず評価・治療する
- 💡チックへの第一選択は行動療法(CBIT)と α2 作動薬 — 軽症に安易な抗精神病薬は避ける
- 💡ジストニアを併発する例では、チック治療のドパミン遮断薬が悪化因子になりうる — α2 作動薬・VMAT2 阻害薬を優先
症候学
単純運動チック:まばたき・顔しかめ・首振り・肩すくめなど短く突発的。複雑運動チック:跳ねる・触る・模倣(エコプラキシア)・自傷的動作など、一見目的様でパターン化した動き
単純音声チック:咳払い・鼻すすり・唸り声など。複雑音声チック:単語・句の発声、反響言語(エコラリア)、汚言(コプロラリア、約 10%)
チックの前にムズムズした違和感(前駆衝動)があり、チックで一時的に解消される。意志で一時的に抑制できるが我慢は苦しく反動が来る。暗示・緊張・疲労・話題で変動し、集中作業中は減ることがある
ADHD(不注意・多動・衝動性)、強迫症(強迫観念・強迫行為)、不安、学習の問題、易怒性・衝動性
ピットフォール
- ⚠汚言(コプロラリア)がなくてもトゥレット症は否定できない — 約 10% にすぎず診断に必須でない
- ⚠併存症(ADHD・OCD・不安)を評価する — チック本体より生活の支障になることが多い
- ⚠チックを「わざと・癖」と誤解しない — 前駆衝動があり抑制は一時的で苦痛を伴う
- ⚠機能性(心因性)チックを見分ける — 思春期・急性発症・前駆衝動や抑制性に乏しい・複雑で奇異な内容・社会的な広がり
- ⚠ドパミン遮断薬は遅発性ジストニアの原因 — 特にジストニア合併例で悪化させうる。α2 作動薬・VMAT2 阻害薬を優先
出典: DSM-5(米国精神医学会)チック症群. / Pringsheim T et al. Practice guideline recommendations summary: Treatment of tics in people with Tourette syndrome and chronic tic disorders. Neurology 2019;92:896-906.