三叉神経痛✓ 監修済み
発症様式: 中高年(40-60代)の片側性発作が典型。突然の発作性で、発作の間隔は数分〜数時間。「数日〜数週間の群発」と「寛解期」を繰り返すことが多い。歯科治療や顔面外傷を契機に発症することもある。
概要
片側性の電撃様疼痛発作を特徴とする三叉神経領域の神経痛(trigeminal neuralgia: TN)。発作は数秒〜数十秒で、洗顔・歯磨き・咀嚼・冷風など軽微な刺激(トリガー)で誘発される。V2(上顎神経)・V3(下顎神経)領域に多く、V1(眼神経)単独は稀。原因の大部分は上小脳動脈(SCA)など血管による三叉神経根の圧迫(classical TN)。多発性硬化症や腫瘍など二次性もあり、若年発症や両側性では二次性検索が必須。第一選択薬はカルバマゼピン、薬物治療抵抗例には微小血管減圧術(MVD)が著効する。
代表症候
サブタイプ
最多。神経血管圧迫による
- -MRI・手術で神経血管圧迫(多くは上小脳動脈)による三叉神経根の形態変化(萎縮・偏位)を認める
- -無害な刺激で誘発される数秒〜2 分の電撃痛、発作間欠期は無症状が典型
- -第一選択はカルバマゼピン、薬物抵抗例に微小血管減圧術(MVD)
若年・両側性で疑う
- -多発性硬化症・橋小脳角部腫瘍などの基礎疾患による
- -若年発症・両側性・三叉神経の感覚低下や他脳神経障害を伴う
- -原疾患の治療を優先する
原因が同定できない
- -明らかな原因がなく、画像も正常または非特異的
- -古典的 TN と同様に薬物療法・低侵襲治療で対応
- -各型とも「純粋発作型」と「持続痛を伴う型(旧・非定型/混合型)」に分かれる
Clinical Pearls
- 💡「水も飲めない」「髭が剃れない」と訴える顔面痛発作は三叉神経痛
- 💡V1単独・若年・両側性は二次性を強く疑う — MRI必須
- 💡カルバマゼピンへの著効は診断的価値あり(少量で発作が止まれば classical TN)
- 💡歯科治療で改善しない/抜歯歴多数の「歯痛」は三叉神経痛を疑う
- 💡薬物抵抗・副作用で内服困難 → MVDで「別人のように」改善することがある
- 💡カルバマゼピン投与時はNa・肝腎機能・血算を定期モニタリング
症候学
「電気が走るような」「刺すような」「焼けるような」激しい疼痛が片側顔面に出現。発作は数秒〜数十秒、長くとも2分以内。
頬・上唇・歯肉などに軽い触覚・冷風・咀嚼・洗顔・歯磨き・会話で発作が誘発される領域がある。
V2(頬・上口腔)または V3(下口腔・下顎)が最多。V1(額・眼周囲)単独は稀(V1単独は群発頭痛との鑑別が重要)。
典型的な classical TN では発作間は完全無症状。
会話・食事・洗顔を避ける、体重減少、抑うつ。
ピットフォール
- ⚠歯科疾患・歯科原因疼痛と誤診されることが多い — 多数の抜歯歴がある「三叉神経痛」が要注意
- ⚠若年(<40歳)・両側性・V1単独・神経学的異常があれば二次性検索(MRI必須)
- ⚠V1単独で発作的疼痛+自律神経症状 → 三叉自律神経頭痛(群発・SUNCT等)を鑑別
- ⚠持続痛(鈍痛)が背景にある場合は atypical TN・神経障害性疼痛 — 治療反応性が異なる
- ⚠カルバマゼピンは効果的だが、低Na血症・薬疹(特にHLA-B*1502保有者ではSJS/TEN)に注意
- ⚠高齢者ではカルバマゼピンのふらつき・転倒・SIADHが問題 — 低用量から漸増
- ⚠薬物抵抗例には MVD(微小血管減圧術)が著効 — 紹介を遅らせない
出典: Cruccu G, et al. Trigeminal neuralgia. N Engl J Med. 2020;383(8):754-762. / Bendtsen L, et al. European Academy of Neurology guideline on trigeminal neuralgia. Eur J Neurol. 2019;26(6):831-849. / 日本頭痛学会 頭痛の診療ガイドライン2021.