脳血管障害
Wallenberg症候群(延髄外側症候群)✓ 監修済み
発症様式: 急性(突然発症)
概要
後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈の閉塞により延髄外側が虚血に陥る脳幹梗塞。めまい・嘔吐に加え、嚥下障害・しゃっくり・同側顔面の温痛覚低下・対側四肢の温痛覚低下(交代性感覚障害)・Horner徴候・同側小脳失調を特徴とする。運動麻痺は通常目立たないが、嚥下障害による誤嚥性肺炎が最も重要な合併症である。めまいが前景に出る場合、前庭神経炎と誤診されることがある。
代表症候
突然発症のめまい・嘔吐・歩行障害嚥下障害(球麻痺)・嗄声しゃっくり(延髄の呼吸中枢近傍の障害)交代性感覚障害(同側顔面+対側四肢の温痛覚低下)Horner徴候(縮瞳・眼瞼下垂・眼球陥凹)同側の小脳失調運動麻痺は通常みられない
Clinical Pearls
- 💡めまい+しゃっくり+嚥下障害の3徴はWallenberg症候群を強く疑う
- 💡最大の合併症は誤嚥性肺炎 — 嚥下評価は必ず行う
- 💡運動麻痺がないため見逃されやすい — 脳神経症候と感覚障害を系統的に診察する
- 💡若年者(<50歳)では椎骨動脈解離の可能性を常に考慮する
症候学
嚥下障害
軟口蓋麻痺・咽頭麻痺により嚥下困難をきたす。水分でむせる、声が変わる(鼻声・嗄声)などで気づかれる。
臨床的意義: 疑核(第IX・X脳神経核)の障害を反映する。誤嚥性肺炎が最も重要な合併症。
しゃっくり
延髄外側症候群に比較的特徴的な症状。発症時から持続することがある。
臨床的意義: 延髄の呼吸関連ニューロンの障害を反映する。めまい+しゃっくりの組み合わせは脳幹病変を疑う重要なサイン。
交代性感覚障害
同側の顔面の温痛覚低下(三叉神経脊髄路核の障害)と対側の体幹・四肢の温痛覚低下(外側脊髄視床路の障害)を呈する。
臨床的意義: 延髄外側症候群に特徴的な所見。触覚・深部感覚は保たれる(内側毛帯は障害されない)。
Horner徴候
同側の縮瞳・眼瞼下垂・無汗症。下行交感神経路の障害による。
臨床的意義: 脳幹の交感神経下行路は延髄外側を通るため、同側にHorner徴候が出現する。
ピットフォール
- ⚠めまいだけが前景に出る場合、前庭神経炎と誤診される
- ⚠嚥下障害は本人が自覚しないことがある — 水飲み試験を積極的に行う
- ⚠運動麻痺がないため「軽症」と判断されやすいが、誤嚥性肺炎のリスクが高い
- ⚠椎骨動脈解離が原因のことがある — 若年者では特に注意
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出典: Kim JS. Pure lateral medullary infarction: clinical-radiological correlation of 130 acute, consecutive patients. Brain. 2003;126(Pt 8):1864-1872. / Sacco RL, et al. Wallenberg lateral medullary syndrome: clinical-magnetic resonance imaging correlations. Arch Neurol. 1993;50(6):609-614.